2012年08月09日
相続税対策としての贈与、本当に贈与があったのですか?:前編
相続税対策の一つとして元気な内に財産を贈与する、という事がよく聞かれます。
相続が発生した際、相続人名義の通帳が有った。
そこには被相続人から毎年のように資金が動かされている。
はい、これは、被相続人から相続人への贈与が行われたものなので、被相続人の財産ではありません(=相続財産ではありません)。
果たして、そう言い切れるのでしょうか?
この記事は、北陸税理士会の全国統一研修会のメモです。
研修のタイトルは『実務で誤りやすい相続税の事例検証』、はい、笹岡宏保先生の研修です。
★預金の名義=その名義人のものである、ということでは無い。
『名義』というのは、その人の物だと思われる…と言う程度のもの。
夫は外で働き奥さんは専業主婦で家を支えている。
妻は、夫の稼ぎを預かって日々の資金繰りをしているが、その資金の管理上、夫名義だと何かと面倒(夫の印鑑証明を持ってこい…)なので、妻名義の口座にて管理している。
この妻名義の資金は、妻の物なのか…。
預金が誰に帰属すべき財産であるかは、署・裁判所・実務上も以下のように考えている。
自己に帰属する資金原資を持って、自己が管理支配を行う預金とする意思で、その者が直接、又は使者、代理人を通じて当該預金の預入契約をした者が預金者であるとする説。(資金原資・管理支配者基準)
★民法上の贈与契約とは。
第549条 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
口頭でも可能ですが、
『あげるよ』『ありがとう、もらうよ』という双方の意思表示が必要です。
★こんな裁判事例
名古屋地方裁判所(平成2年3月30日、昭和62年(行ウ)第7号)
被相続人は、相続税の課税を回避するため、原告ら名義を使って本件定期預金の積立てを開始し、途中友人の税理士である訴外Aの助言を入れて、贈与税がかからないよう、その非課税限度額内で預金を続けたが、その管理、運営及び払戻しについては、すべて自らの判断で行っていたものであり、一方、原告らはその名義が使用されていたほかは本件定期預金の形成、運営又は使用に関与することはなかったのであって、かかる場合、本件定期預金は被相続人の財産であって、本件相続財産に帰属すると認めるのが相当である。
お父さんが、私たちの名義の通帳を作ってまた何かやってるわ。
悪いことでは無いと思うけれど。
こんな様子では、民法上の『贈与』は成立しないという事ですね。
贈与したからには、もらった人が自由に使えるもの。
『子供が馬鹿になるから贈与はしない』
そうおっしゃる方も。
考え方は人それぞれ。
川中は、この考え方は好きです。
『後編:相続税対策としての贈与、本当に贈与があったのですか?』に続く。
写真は、本分に関係の無い、なんなん亭のカツ丼。
美味しゅうございました。
(ちょっとアップ過ぎましたね、いまだにスマフォでの撮影に慣れなくて。)
相続のご相談なら鯖江の税理士法人川中経営
税理士・ITコーディネータ 川中重司
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