
事件番号 | 平成21(行ツ)73 |
事件名 | 通知処分取消請求事件 |
裁判年月日 | 平成23年09月22日 |
法廷名 | 最高裁判所第一小法廷 |
裁判種別 | 判決 |
結果 | 棄却 |
判例集等巻・号・頁 | |
原審裁判所名 | 東京高等裁判所 |
原審事件番号 | 平成20(行コ)236 |
原審裁判年月日 | 平成20年12月04日 |
判示事項 | |
裁判要旨 | 平成16年法律第14号附則27条1項が,長期譲渡所得に係る損益通算を認めないこととした同法による改正後の租税特別措置法31条の規定をその施行日より前に個人が行う土地等又は建物等の譲渡について適用するものとしていることは,憲法84条の趣旨に反するものとはいえない |
参照法条 | |
全文 | 全文 |
日本国憲法第84条では、下記のように定められています。
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
では、法律で定めれば、遡って税制改正しても良いのか?
という疑問が生じます。
納税者有利な改正であれば異論を唱える人は少ないのでしょうが、
納税者に不利な改正であれば、どうでしょう。
個人の方が不動産を譲渡して損が出た。
この方は、他にも収入がある。
この場合の所得税の取扱いは???
残念でしたね、です、今では。
(注:正確な表現ではありません。)
でも、他の収入と相殺できた時代もあったんです。
この改正は、平成16年4月1日に施行され、
改正の適用は、平成16年1月1日からとされました。
(つまり、遡って適用された訳です。)
今回の判決から拾い読みすると、
したがって,暦年途中で施行された改正法による本件損益通算廃止に係る改正後措置法の規定の暦年当初からの適用を定めた本件改正附則が憲法84条の趣旨に反するか否かについては,上記の諸事情を総合的に勘案した上で,このような暦年途中の租税法規の変更及びその暦年当初からの適用による課税関係における法的安定への影響が納税者の租税法規上の地位に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかという観点から判断するのが相当と解すべきである。
措置法の規定を平成16年の暦年当初から適用することとされたのは,その適用の始期を遅らせた場合,損益通算による租税負担の軽減を目的として土地等又は建物等を安価で売却する駆け込み売却が多数行われ,上記立法目的を阻害するおそれがあったため,これを防止する目的によるものであったと解されるところ,平成16年分以降の所得税に係る本件損益通算廃止の方針を決定した与党の平成16年度税制改正大綱の内容が新聞で報道された直後から,資産運用コンサルタント,不動産会社,税理士事務所等によって平成15年中の不動産の売却の勧奨が行われるなどしていたことをも考慮すると,上記のおそれは具体的なものであったというべきである。そうすると,長期間にわたる不動産価格の下落により既に我が国の経済に深刻な影響が生じていた状況の下において,本件改正附則が本件損益通算廃止に係る改正後措置法の規定を暦年当初から適用することとしたことは,具体的な公益上の要請に基づくものであったということができる。
これらの諸事情を総合的に勘案すると,本件改正附則が,本件損益通算廃止に係る改正後措置法の規定を平成16年1月1日以後にされた長期譲渡に適用するものとしたことは,上記のような納税者の租税法規上の地位に対する合理的な制約として容認されるべきものと解するのが相当である。したがって,本件改正附則 が,憲法84条の趣旨に反するものということはできない。
(拾い読み、ここまで。)
納税者不利の税制改正が、遡って適用されることもある。
国会が不安定な今だけに、興味深い判例です。
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税理士・ITコーディネータ 川中重司